【2026年7月】退去立会のクロス負担計算 完全ガイド|耐用年数6年の根拠・㎡単位と面単位・全面請求できるケース

「クロスの張替え費用、借主にいくら請求できるのか」——退去立会で最も頻繁に、そして最も揉めるのがクロスの負担計算です。国土交通省の原状回復ガイドラインには明確なルールがありますが、「なぜ耐用年数が6年なのか」「破れは1ヶ所でもどこまで張替えられるのか」「全面請求はできるのか」まで正確に説明できる担当者は多くありません。本記事では、クロスの負担計算をガイドラインの根拠から実際の計算例まで、実務目線で徹底解説します。

1. 大原則:借主が負担するのは「善管注意義務違反」の分だけ

国土交通省『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』では、原状回復とは「借りた当時の状態に戻すこと」ではなく、賃借人の故意・過失や善管注意義務違反による損耗・毀損を復旧することと定義されています。通常損耗・経年劣化の回復費用は賃料に含まれており、貸主負担が原則です。

  • 借主負担になる例:落書き、飲み物をこぼした跡の放置によるシミ・カビ、結露を放置して拡大したカビ、タバコのヤニ・焦げ、ペットによる傷・臭い
  • 貸主負担のままの例:日照による変色(日焼け)、家具の設置跡、画鋲・ピンの穴(下地ボードの張替えが不要な程度)、テレビ・冷蔵庫の電気ヤケ

2. なぜ耐用年数6年なのか?——「残存価値1円」の考え方

ガイドラインは、借主負担額の算定に減価償却の考え方を採用しています。クロスはカーペットやクッションフロアと同じ「耐用年数6年」のグループに分類されており、これは減価償却資産の耐用年数(税法上の考え方)を参考にしたものです。平成19年の税制改正で残存価値が1円まで償却できるようになったことを受け、現行ガイドライン(平成23年再改訂版)は「6年で残存価値1円」となる直線で負担割合を算定するとしています。

計算式は次のとおりです。

借主負担割合 =(6年 − 経過年数)÷ 6年

  • 入居1年で退去:約83.3%
  • 入居2年:約66.7%
  • 入居3年:50%
  • 入居4年:約33.3%
  • 入居5年:約16.7%
  • 入居6年以上:残存価値1円(=材料価値の請求は実質不可)

注意したいのは起算点です。経過年数は「入居からの年数」ではなく「そのクロスが張られてからの年数」で考えるのが原則。入居時に既に2年経過したクロスなら、入居4年で残存価値1円に到達します。入居時のクロスの状態・張替え時期の記録が、ここで効いてきます。

3. 負担範囲は「㎡単位」が原則、広くても「1面」まで

ガイドラインは、補修は可能な限り毀損部分に限定し、その最低限度の施工単位(=㎡単位)を基本としています。ただしクロスは色・模様合わせの問題があるため、「賃借人が毀損した箇所を含む一面分まで」の張替え費用を借主負担とすることはやむを得ない、とされています。

つまり「破れが1ヶ所あるから、部屋全体を張替えて全額借主請求」は原則NG。毀損のある面までが上限です。見積書が全面張替えになっている場合でも、借主への請求は毀損面分に按分する必要があります。

4. クロスを「全面請求」できる唯一のケース

例外は喫煙等です。ガイドラインでは、喫煙等により当該居室全体でクロスがヤニで変色したり臭いが付着した場合に限り、居室全体のクリーニングまたは張替え費用を借主負担とすることが妥当とされています。

ただしこの場合も経過年数の考慮は免れません。長期入居で残存価値が1円になっていれば、材料費・張替え費用そのものの請求は実質不可です(東京地裁平成30年10月10日判決も、ヤニ・カビを善管注意義務違反と認めつつ、8年居住による残存価値ゼロを理由に総張替費用の請求を認めませんでした)。一方で、善管注意義務違反がある以上、張替えに伴う施工費・人件費等の一部負担を求める余地はあるとされており、ここは立会での合意と記録がものを言います。

5. 実際に計算してみよう(単価の一例で試算)

クロスの張替え単価は、会社・地域・仕様・契約内容によって幅があります。ここでは、例えば1,650円/㎡(材工共)と仮定して3つのケースを計算します。実際の精算では、必ず自社の料金表・契約単価に置き換えてください。

ケース① 入居2年・不注意で家具をぶつけてクロスを破損。壁1面(10㎡)を張替え

→ 張替え費用:10㎡ × 1,650円 = 16,500円

→ 負担割合:(6−2)÷6 ≒ 66.7%

→ 借主負担額:16,500円 × 66.7% ≒ 11,000円

ケース② 入居4年・家具の引きずり傷。毀損は2㎡だが、色合わせのため1面(12㎡)を張替え

→ 張替え費用:12㎡ × 1,650円 = 19,800円(借主負担の上限は毀損箇所を含む一面分まで)

→ 負担割合:(6−4)÷6 ≒ 33.3%

→ 借主負担額:19,800円 × 33.3% ≒ 6,600円

ケース③ 入居8年・喫煙により居室全体(60㎡)が変色

→ 張替え費用:60㎡ × 1,650円 = 99,000円

→ 負担割合:6年超のため残存価値1円。材料費・張替え費用の請求は実質不可

→ ただし善管注意義務違反があるため、施工費・人件費等の一部負担を協議する余地はある(立会での合意と記録が前提)

同じ「クロスの張替え」でも、経過年数と負担範囲で借主負担は1万円にも0円にもなります。値上げで単価が動いている今こそ、計算根拠の説明力が問われます。

6. 実務で間違えやすい4つの落とし穴

  • 起算点のミス:入居時にクロスが新品でなければ、入居時点の経過年数から起算する。入居時の記録がないと争いになる
  • 全面張替え見積の丸ごと転嫁:施工上は全面張替えでも、借主請求は㎡単位・面単位の原則で按分する
  • 下地ボードの毀損:壁に穴を開けるなど下地ボード(石膏ボード)の交換が必要な損傷は、クロスとは別に扱う(経過年数の考え方が異なる)
  • 「6年超=請求ゼロ」と思い込む:残存価値1円でも、善管注意義務違反があれば施工費等の負担を協議できる。逆に、記録がなければその協議すらできない

この計算、AIなら現場で一瞬で終わります——「AI退去立会」

経過年数の起算、負担範囲の按分、単価の反映——この計算を立会現場で毎回正確にやるのは、ベテランでも大変です。

リモデラの『AI退去立会』は、賃借人がスマホで撮影した損傷箇所をAIが判定し、国土交通省ガイドラインに基づく経過年数・負担割合の計算を自動で実行します。自社の料金表を登録しておけば、その単価でそのまま精算額を算出。入居時点検から退去立会まで、写真・動画・会話履歴などのログがすべて残るため、「入居前からあった損傷か」の判断も、精算根拠の説明も、証拠付きでできます。

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✅ まとめ:クロス計算は「割合 × 範囲 × 単価」

  • 借主負担割合は(6年−経過年数)÷6年。6年超で残存価値1円
  • 負担範囲は㎡単位が原則、認められても毀損箇所を含む1面まで。全面請求は喫煙等の例外のみ
  • 単価は自社の料金表が基準。値上げ局面では単価表の更新も忘れずに
  • 起算点・下地ボード・6年超の施工費負担——例外の理解と入居時からの記録が紛争を防ぐ

クロスの計算根拠を即答できる担当者は、入居者からもオーナーからも信頼されます。本記事をチェックリスト代わりに、自社の精算基準と説明フローを一度点検してみてください。

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